大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)9754号 判決
原告 株式会社 エース電研
右代表者代表取締役 武本孝俊
右訴訟代理人弁護士 小坂志磨夫
右同 小池豊
右両名訴訟復代理人弁護士 森田政明
原告訴訟代理人弁護士 吉田武男
右四名輔佐人弁理士 柏原健次
右同 三品岩男
被告 有限会社 友愛商事
右代表者代表取締役 松原昌栄
右訴訟代理人弁護士 安田有三
右輔佐人弁理士 高山道夫
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一原告の求めた裁判
一 被告は、別紙一物件目録記載の薄形玉貸機を販売し、貸し渡し、販売または貸し渡しのために展示してはならない。
二 被告は、前項の薄形玉貸機を廃棄せよ。
第二事案の概要
本件は、原告が昭和六〇年一一月一八日にした補正が要旨変更に当るかどうかが、主な争点になった事案である。
第三認定ないし争いのない事実
一 原告の権利
原告は、左記特許権を有している(争いがない。但し、出願日の繰り下げについては、後記のとおり。)。
記
発明の名称 遊技場における薄形玉貸機
出願日 昭和五一年六月三〇日(特願昭五一―七七三五八)
出願公告日 昭和六一年九月一二日(特公昭六一―四一〇三六)
登録日 昭和六二年八月一一日
特許番号 第一三九二六八二号
特許請求の範囲
「1 複数台のパチンコ台を並べて配置した遊技場におけるパチンコ台間に配置される金銭の投入に応じて貸玉を放出する薄形玉貸機において、
縦状の紙幣と硬貨の挿入口を設け、該両挿入口に連通する取り込み通路を別々に設け、
該両取り込み通路の適宜の箇所に少くとも紙幣と硬貨の検定部を設け、
前記両取り込み通路および検定部等でトラブルが発生したときに、外部に表示するトラブル表示部を別々に設けたことを特徴とする遊技場における薄形玉貸機。」(別添本件特許公報―本件公報―の該当欄記載のとおり。)。
二 本件発明の構成要件及び作用効果
1 本件発明の構成要件
本件公報によれば、本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。
(一) 複数台のパチンコ台を並べて配置した遊技場におけるパチンコ台間に配置される金銭の投入に応じて貸玉を放出する薄形玉貸機において、
(二) 縦状の紙幣と硬貨の挿入口を設け、該両挿入口に連通する取り込み通路を別々に設け、
(三) 該両取り込み通路の適宜の箇所に少なくとも紙幣と硬貨の検定部を設け、
(四) 前記両取り込み通路および検定部等でトラブルが発生したときに、外部に表示するトラブル表示部を別々に設けたことを特徴とする。
(五) 遊技場における薄形玉貸機。
2 本件発明の作用効果
本件公報によれば、本件発明は、右の構成要件からなることにより、次の作用効果を奏するものであると認められる。
(一) 複数台のパチンコ台を並べて配置した遊技場におけるパチンコ台間に配置され金銭の投入に応じて貸玉を放出する薄形玉貸機において、縦状の紙幣と硬貨の挿入口を設けた(本件発明の構成要件(一)、(二))ので、遊技客は、パチンコ台の前の席に座ったままで玉を交換でき、射幸心を損なわれることなく、遊技をそのまま継続できる。
(二) 右玉貸機に縦状の紙幣挿入口を設け(前同(二))、幅の広い紙幣を縦に挿入するようにしたので、玉貸機を薄形にできる。
(三) 前記両取り込み通路および検定部等でトラブルが発生したときに、外部に表示するトラブル表示部を別々に設け(前同(四))、硬貨と紙幣用のトラブル表示部を設けたので、トラブル発生原因の解明が早くつき、トラブル修復を迅速に行うことができる。
三 被告の販売行為
1 被告は、昭和六二年二月ころから、別紙一物件目録記載の薄形玉貸機(以下「被告装置」という。)を業として販売している(争いがない。)。
2 もっとも、被告は、別紙一物件目録の図面記載の薄形玉貸機を販売していることは争わないが、被告装置の構成を正確に記述するために、同目録の記載を、別紙二物件目録訂正箇所記載のとおり、それぞれ訂正すべきであると主張する。
しかし、本件における争点との関係では、原告が主張する別紙一物件目録記載の説明で特に支障はないと考えられるので、これに従い右のとおりとする(但し、以下においては、別紙一物件目録中に「千円札」とあるのを、すべて「一〇〇〇円札」と表記することとする。)。
四 被告装置の構成と作用効果
1 被告装置の構成
別紙一物件目録の記載、《証拠省略》によれば、被告装置の構成は、次のとおり分説するのが相当である(以下の被告装置についての番号及び符号は、別紙一物件目録記載のものを指す。)。
(一) 複数台のパチンコ台を並べて配置した遊技場におけるパチンコ台間に配置される金銭の投入に応じて貸玉を放出する薄形玉貸機1において、
(二) 縦状の一〇〇〇円札投入口10と一〇〇円硬貨投入口3を設け、一〇〇〇円札投入口10に連通し紙幣回収ラインに通じる紙幣の通路たるトレイ21、及び一〇〇円硬貨投入口3に連通し硬貨排出口18aを通じて硬貨回収ラインに至る硬貨の通路12、15、硬貨回収通路18を設け、
(三) 硬貨の通路12に一〇〇円硬貨選別機13を設けるとともに、マイクロコンピュータ26を備えた一〇〇〇円札識別機20内に設けた紙幣の通路たるトレイ21にセンサ22a、22b、22cを設け、
(四) 玉貸状況及びその完了、釣銭返却状況及びその完了をアラビア数字で外部に表示する一方、一〇〇〇円札識別機20内部や硬貨の通路に設けられた検出スイッチ16等で貨幣詰まり等のトラブルが発生したときにトラブルに応じたアルファベット文字を外部に表示する釣銭等表示部8を設けたことを特徴とする。
(五) 遊技場における薄形玉貸機1。
2 被告装置の作用効果
《証拠省略》によれば、被告装置は、右の構成を有することによって、本件発明のそれと同様の作用効果(遊技客が席を立たずに玉貸し可能、玉貸機の薄形化、トラブル発生原因の早期解明・トラブルの迅速な修復)を奏するものと認められる。
第四争点(被告装置と本件発明の対比)とこれに関する認定、判断
一 原告の出願と補正
1 原告は、昭和五一年六月三〇日、本件発明につき特許出願をした。右出願時の明細書及びこれに添付された図面(以下「本件原明細書」及び「本件原図面」という。)に記載された事項は、別紙三原明細書記載のとおりである。
2 右出願に対して、昭和六〇年九月三日、「この出願の発明は、貨幣鑑別機のうち、主要部を販売機に設け、鑑別部のみを集中化したものと認められるが、事実上鑑別部は単なる比較・判定回路よりなるものであって鑑別機のごく一部を構成するものにすぎない。よって、この発明は各販売機ごとに鑑別機を設けたものに較べて著しくコストが上り、しかも外乱の影響を受けやすく何らメリットがあるものとは認められない。」として拒絶査定がなされた。
3 これに対し、原告は、昭和六〇年一一月一八日に提出した手続補正書(以下「本件手続補正書」という。)により、右出願時の明細書(本件原明細書)及び図面(本件原図面)を補正した(以下、右補正を「本件補正」という。)。本件補正の概要は、発明の名称を「自動交換装置」から「遊技場における薄形玉貸機」に変更したほか、本件原明細書の特許請求の範囲を含めた全文を訂正したこと、本件原図面にあった第1図、第2図、第4図及び第5図を削除し、同第3図を一部補正して第1図とし、本件原図面になかった第2図及び第3図を付加したことであり、その内容は、本件公報に記載されているとおりである。
4 本件発明は、右補正後、公告、登録されたものであり、本件補正は、特許法四〇条にいう「願書に添付した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本送達前にした補正」に該当する。
二 被告の要旨変更等の主張の概要
1 被告は、本件補正に関し次のとおり主張する。
(一) 本件補正は、(1)鑑別機能を持たなかった「検定部」に鑑別機能を持たせたこと、(2)本件原明細書になかった「トラブル表示部」を設けたこと、(3)実施例を創出したこと、(4)未完成発明を完成させたこと、(5)発明の目的及び効果を作出したこと、以上いずれの点からみても要旨変更に当る。したがって、本件発明の出願日は、本件手続補正書の提出日である昭和六〇年一一月一八日とみなされる。
(二) しかるところ、原告は、右繰り下げられた出願日である昭和六〇年一一月一八日より以前に本件発明と同一の構成の薄形玉貸機(商品名「キングサンドイッチⅢ」)を販売していた。それ故、本件発明は、明らかな無効原因(特許法二九条一項一号又は二号、一二三条一項一号)を有している。
(三) したがって、本件訴訟においては、一応、本件特許権の存在を前提とするとしても、その技術的範囲は、本件特許明細書(本件公報の図面)に記載された実施例と一致するものに限定されるべきである。しかるところ、被告装置は、明らかにこれと異なるから、本件発明の技術的範囲に属さない。
(四) また、被告装置は、株式会社アイラブユー(以下「アイラブユー社」という。)が、昭和六〇年春ころ完成し、右繰り下げられた出願日前から製造販売していた「わざ」と同一のものである。したがって、それは、万人に許された自由な技術の実施品にほかならず、被告の被告装置販売行為を本件特許権の侵害とする余地はない。
(五) そして、本訴請求は、右のとおり本件発明の出願前公知の技術を本件特許権の侵害であるとするものであり、しかも、原告は、当業者として被告装置が「わざ」と同一のものであることを熟知しながら本訴に及んだものであるから、原告の本訴請求は権利の濫用である。
2 被告の右主張に対し、原告は、次のとおり反論する。
(一) 願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加、減少し又は変更する補正は、明細書の要旨を変更しないものとみなされる(特許法四一条)。そして、右にいう明細書等に記載した事項の範囲内とは、明細書等に直接的に記載されたものに止まらず、客観的にみて記載されていたのと同視される事項(いわゆる自明事項)をも含むものである。
(二) しかるところ、本件補正は、右自明事項も含む本件原明細書及び本件原図面の範囲内、すなわち本件原明細書開示の技術事項の範囲内において、発明の内容を変更したものにほかならないから、要旨変更とならない。
したがって、要旨変更を前提とする被告の主張は全て理由がない。
三 右要旨変更等の主張に対する検討
1 「検定部」の鑑別機能について
(一) 右に関する本件原明細書の記載
(1) 発明の名称は「自動交換装置」である。
(2) 特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「所定の商品交換媒介物の検定信号より商品交換媒介物を鑑別する鑑別機と、この鑑別機を共用しそれぞれ投入された所定の商品交換媒介物を検定して検定信号を前記鑑別機に伝送すると共にこの鑑別機から伝送されてきた鑑別結果に応じて商品交換媒介物と商品との少くとも一方を送出する複数の自動交換機とを具備することを特徴とする自動交換装置。」(本件原明細書一頁三~一〇行)
(3) 発明の詳細な説明欄にみられる「検定部」及び「鑑別機」に関する記載は、次のとおりである。
(ア) 「従来、パチンコ遊技場では一〇〇円硬貨をパチンコ玉と交換する硬貨用自動玉貸機と、五〇〇円、一〇〇〇円の紙幣を一〇〇円分、又は二〇〇円分等のパチンコ玉と交換すると同時につり銭を出す紙幣用自動玉貸機とを設置している。硬貨用自動玉貸機は一〇〇円硬貨の鑑別を簡単な装置で行うことができるので、コンパクトな形状となっており、したがってパチンコ台の各間隙等に設置することができるため、店内に多数配置している。しかし、紙幣用自動玉貸機は紙幣の鑑別に高価で大型の紙幣鑑別機を要するので、高価で大型となり、そのため店内に一~二台程度しか設置できないのが現状である。」(本件原明細書一頁一六行~二頁九行)
(イ) 「鑑別機を自動交換機とは別に設けて複数の自動交換機で鑑別機を共用することにより安価で自動交換機の小型化を図ることができる構成とした」(同三頁四~七行)
(ウ) 「各自動玉貸機31、32……はそれぞれ紙幣用自動玉貸機における鑑別機を除いた部分と硬貨用自動玉貸機とを組合わせたものであり、鑑別機4と信号線51、52……、61、62……、71、72……で接続されている。)(同三項一二~六行)
(エ) 「この取込み用ローラ251、261……で取込んだ紙幣を検定する検定部271」(同四頁九~一一行)
(オ) 「鑑別機4は複数台の自動玉貸機31、32……からの検定信号を時分割方式等により一台で鑑別してその結果を返送するものであって管理室等に設置され、」(同五頁二~五行)
(カ) 「その紙幣は自動玉貸機31において取込用ローラ251、261により内部に取込まれて検定部271で検定され、すなわち紙幣に関するデータが取出される。この検定部271からのアナログ又はディジタルの検定信号は信号機51によって鑑別機4の記憶部34に伝送されて一時的に記憶部34に記憶される。記憶部は34はこのようにして各自動玉貸機31、32……の検定部271……から伝送されてきた検定信号を一時的に記憶するが、この記憶部34に記憶された検定信号は制御部36の働きによって順次取出されて鑑別部35で鑑別され、」(同六頁一―一二行)
(キ) 「鑑別機を自動交換機と別に設けたので、自動交換機の小型化を図ることができ、パチンコ遊技場等で小さなスペースに多数の自動交換機を設置することが可能となり、実用上極めて有効である。しかも複数の自動交換機で一台の鑑別機を共用するので、コストの低減を図ることができる。」(同八頁一〇~一六行)
(4) そして、添付の本件原図面には、自動玉貸機と鑑別機が別々に設けられた図面(第1、2、4図)だけが記載されていた。
(二) 右に関する本件手続補正書(本件特許明細書)の記載
(1) 発明の名称は「遊技場における薄形玉貸機」である。
(2) 特許請求の範囲の記載は、前記のとおりである。
(3) 発明の詳細な説明欄にみられる「検定部」に関する記載は、次のとおりである。
(ア) 「本発明は、……五〇〇円紙幣および一〇〇〇円紙幣等の紙幣と玉を交換できる玉貸機を提供することを目的とし……かかる目的を達成するため、……縦状の紙幣と硬貨の挿入口を設け、該両挿入口に連通する取り込み通路を別々に設け、該両取り込み通路の適宜の箇所に少くとも紙幣と硬貨の正偽等を判別する検定部を設け、」(本件公報二欄二~一二行)
(イ) 「該両通路61、62……、71、72……、の適宜の箇所に配置された貨幣をチェックするための検定部81、82……、91、92……、」(同三欄四~六行)
(ウ) 「自動玉貸機21は従来の硬貨用自動玉貸機と同様にその硬貨を検定して本物であれば一〇〇円分のパチンコ玉を取出口151に送出して遊技客に出す。又自動玉貸機21はその硬貨が偽物であるか、又は一〇〇円以外の硬貨であれば硬貨返却口171へその硬貨を送出して遊技客に返却する。又遊技客が一〇〇〇円札等紙幣を自動玉貸機21の紙幣挿入口51より投入すると、その紙幣は自動玉貸機21において取り込みローラ131により内部に取り込まれて検定部9で検定され、本物であればそのまま取り込み通路内に取り込まれ、そうでなければ遊技客に返却される。そして本物の場合は玉貸額選択釦121を点灯させる。」(同三欄三一~四三行)
(4) そして、添付図面には、薄形玉貸機の内部に硬貨検定部と紙幣検定部を設けた図面(第3図)だけが記載されている。
(三) 右に関する被告の主張
(1) 前記(一)の本件原明細書の記載によれば、本件原明細書に記載された鑑別機が自動玉貸機内ではなく、自動玉貸機外の管理室等に設けられるもので、複数の自動玉貸機に共用されるものであること、及び自動玉貸機に投入された紙幣が本物か偽物かの鑑別は、パチンコ台間の自動玉貸機内ではなく、複数の玉貸機に共用される玉貸機外の鑑別機で行なわれるものであることが明らかである。
そして、前記詳細な説明欄の記載(ことに前記(一)(3)(カ)の記載)に照らすと、本件原明細書に記載された自動玉貸機内の検定部は、紙幣のデータを認識し鑑別機にそのデータを送るものであり、紙幣の真贋の判断(正偽の判別)は右検定部ではなく、自動玉貸機外に設けられた鑑別機によって行なわれるものであることが明らかである。自動玉貸機内の検定部は、それ自体としては紙幣の真贋を鑑別する鑑別機能を有するものではなかった。
(2) ところが、前記(二)の本件手続補正書(本件特許明細書)の記載によれば、そこに記載された紙幣の検定部が、薄形玉貸機内に設けられているものであることは明らかである。
そして、前記詳細な説明欄の記載、ことに「紙幣と硬貨の正偽等を判別する検定部を設け、」(前記(二)(3)(ア))との記載や「自動玉貸機21は……硬貨を検定して本物であれば……パチンコ玉を取出口151に送出し……硬貨が偽物であるか……一〇〇円以外の硬貨であれば硬貨返却口171へその硬貨を送出して……返却する。又遊技客が……紙幣を自動玉貸機21の紙幣挿入口51より投入すると、その紙幣は自動玉貸機21において取り込みローラ131により内部に取り込まれて検定部9で検定され、本物であればそのまま取り込み通路内に取り込まれ、そうでなければ遊技客に返却される。そして本物の場合は玉貸額選択釦121を点灯させる。」(前同(ウ))との記載に照らすと、本件発明に係る薄形玉貸機の検定部が貨幣(硬貨及び紙幣)の真贋を鑑別する機能を有するものであることは明らかである。
(3) そうすると、本件補正は、本件原明細書記載の「検定部」にはなかった紙幣の真贋鑑別機能を付加して、本件特許明細書の「検定部」としたものといわねばならず、右補正が本件原明細書に記載された範囲内の補正でないことは明らかである。
(四) 右に関する原告の主張
(1) 本件原明細書に記載された発明は、自動交換装置に関するものであって、そこに示されている自動玉貸機の鑑別機は、自動玉貸機の外にあり、複数の玉貸機に共通のものである。そして、自動玉貸機内の検定部は、投入された紙幣のデータを認識して鑑別機にそのデータを送るものであり、それ自体としては、紙幣の真贋を鑑別する鑑別機能を有するものでなかった。
(2) これに対し、本件発明は紙幣を縦に挿入する遊技場の薄形玉貸機に関するものであって、本件原明細書に記載された発明の構成要件から鑑別機の要件を外して検定部だけを残したもので、その検定部は、本件原明細書に記載されたのと同様、情報蒐集部門としてのそれであり、鑑別機能を有するものではない。
(3) 右本件発明の構成は、以下に説明するとおり、いずれも本件原明細書に記載されていたか、記載されていたのと同視される自明事項であるから、本件補正は、なんら要旨変更となるものではない。すなわち、
(ア) 紙幣を縦に挿入する薄形玉貸機は、本件原明細書に実施例として示されていた(本件原図面第3図参照。)
(イ) 本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、鑑別機を玉貸機と一体にするか別体にするかは、任意に選択できる実施事項となっており、「検定部」といえば鑑別のために必要な紙幣の諸情報を蒐集する部門と解するのが技術常識である。
(a) 鑑別機の設置について
① 本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、既に硬貨の識別(検定、鑑別)については、機械式のもの(機械的コインセレクタ)と共に電気式のもの(電気的コインセクレタ)も周知され、それが薄形玉貸機(パチンコ台相互間に設置される台間薄形玉貸機)内に設置されていた。
② また、紙幣の識別のためには、検定、鑑別の両部を具備したコンパクトな紙幣識別機が周知であり(「新日本電気技報」)、被告装置と同様にICを用いて検定、鑑別の両部を一体化した紙幣識別機も知られていた(「紙幣鑑別機等における紙幣ジャム処理装置」の公開特許公報―特開昭和五〇―四五六九四、松阪立石電機株式会社昭和五〇年九月作成の「五〇〇円、一〇〇〇円ビルチェッカ」の仕様書)。
③ 更に、被告装置の一〇〇〇円札識別機20に用いられているマイクロコンピュータも、当時既に開発され周知の技術であって、価格の点を別にすれば、これを鑑別機として使用することにより紙幣識別機の小型化を図り、全構成部材をパチンコ台間の玉貸機本体内に収納することも技術的には可能であった。しかし、当時は、まだ、高価なものであり、結局価格上の問題から、薄形玉貸機には採用されていなかったにすぎない。
④ 一方、右出願当時、玉貸機(パチンコ台相互間に設置されるのではなく、遊技場内に設置されるもの)等に用いられていた公知の紙幣識別機(紙幣を横に挿入する方式のもの)は、元来小型化の要請がなかったことから大型であり、その全部(特に鑑別機部分)をそのままパチンコ台間の薄形玉貸機本体内に収納することは困難であった。そのために、紙幣識別機の鑑別機部分をパチンコ台の上部空間である幕板や下部空間である腰板に設置する方式、パチンコ台背面に交互に設置する方式がとられ、これら玉貸機本体内に全構成部材を収納することなく一部を機外に設置する方式は当時公知の技術となっていた。
⑤ 以上にみてきたところから明らかなように、右当時、薄形玉貸機等の自動交換装置において、紙幣の鑑別機部分をこれと一体に設置するか、別体として設置するかは、技術的には十分可能なことであり、実施にあたって任意に選択できる実施事項となっていた。つまり、右事項は、本件原明細書に記載されているのと同視できる自明事項であった。
(b) 「検定部」について
玉貸機、自動販売機、両替機等の自動交換装置においては、投入された貨幣の真贋を識別しなければならないが、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、既にその識別、ことに紙幣の識別については、投入紙幣についての諸情報を蒐集するための部門である検定部(検出部等とも称される。)と、検定部で蒐集された情報を受けて真贋等を判断する鑑別部とが明瞭に区別されていた。すなわち、この種自動交換装置の分野において、紙幣の識別に関し「検定部」といえば、右の意味における紙幣の諸情報を蒐集する部門と理解し、「鑑別部」といえば、検定部で蒐集された情報を受けて真贋等を判定する部門と理解するのが技術常識であった。
(ウ) 原告は、これらの諸事情を勘案し、本件原明細書においては、玉貸機のほか両替機等を含めた自動交換装置を対象技術とし小型化の問題については、価格上の問題から、マイクロコンピュータ等を使用し鑑別機を一体化して小型化を図る方式は採用せず、数台の自動交換機につき鑑別機を共有することによって自動交換機の小型化を図る方式に発明性を主張して特許請求をした。ただ、本件原明細書において、出願当時公知の紙幣鑑別機が大型で高価であることを強調した(本件原明細書二頁一~九行)のは、右に述べたところからすると、右出願当時の公知の技術水準について誤解を招く未熟で不完全な記載であった。
(エ) そこで、前記拒絶査定を受けた原告は、右出願当時の公知の技術水準について誤解を招く未熟、不完全な記載を正すと共に、本件原明細書に記載された発明の構成要件から鑑別機の要件を外し、前記実施例として示しておいた「紙幣の縦入れ」による薄形玉貸機の構成をもって特許請求をすることとした。
右補正後の発明は、発明の構成要件から鑑別機の要件を外している点からすれば、原出願の特許請求の範囲記載の発明とは別異の発明であるが、それは、紙幣鑑別機を薄形玉貸機と一体に設けるか、別体にするかを、発明の実施に当たっての実施事項とし、補正によって変更された発明の必須の構成要件としなかったにすぎない。もちろん、鑑別機は製品としての玉貸機に必須のものであるが、必ずそれを発明の構成要件としなければならないものではない。なぜなら、発明は技術思想の創作であり、現実の製品や実際の方法として具体化するにあたって技術的に必須な構成部材等のすべてを発明の構成要件として網羅しなければならないものではないからである。
そして、右補正後の本件発明にいう「検定部」も、もちろん、前記技術常識に従った情報蒐集部門としてのそれであり、なんら鑑別機能を有するものではない。
(オ) 被告は、前記本件手続補正書(本件特許明細書)の記載を根拠に、本件発明における「検定部」は紙幣の真贋の判定まで行なうものであると主張するが当たらない。すなわち、
(a) まず、本件手続補正書(本件特許明細書)で、「貨幣をチェックするための検定部81、82…91、92…、」(前記(二)(3)(イ))というときのチェックとは、例えば「一〇〇〇円札紙幣を所定挿入口に入れると、内部機構より紙幣を引き込み、検出部にて所定個所をチェックし、その信号をパターン認識部へ転送する。」(「新日本電気技報」)というときと同様、「検査」、「検出」の意味であり、右の「貨幣をチェックするための検定部」との記載は、本件原明細書にあった「紙幣を検定する検定部」(本件原明細書四頁一〇~一一行)との記載を「紙幣をチェックする検定部」と書き換えたようなものであり、極く当然のことである。
(b) そして、前記「紙幣と硬貨の正偽等を判別する検定部」(前記(二)(3)(ア))との記載は、この種分野において検定部ないし検出部といえば、前記のとおりチェックした結果の信号を鑑別部門に送って、貨幣の真贋等を判定(正偽等を判別)させるものであり、その最終目的は貨幣の真贋の判定にほかならないことから、右最終目的である貨幣の「正偽等の判別」を以て検定部の形容句としたものにすぎない。このことは前記「硬貨を検定して本物であれば、……」、「紙幣は…検定部で検定され、本物であれば…」(前同(ウ))との記載についてもいえることである。それは、被告装置と同様な構成を有するアイラブユー社製の紙幣識別装置のパンフレットにおいて、「磁気、光学センサーの組合せにより、高精度、高信頼性の識別を実現」(原告注・センサそれ自体は識別を行なうものではない。)と記載されているのと変わるところがない。
(カ) 以上によって明らかなように、本件補正は、なんら要旨を変更するものではない。なお、本件発明では、貨幣の通路に「少くとも各検定部を設けること」を必須の要件としたに止まり、鑑別部を構成要件から外しているが、このことは、鑑別部が玉貸機本体内にあってはならないことを意味しない。本件発明の「検定部」が鑑別機能を有していないということは、鑑別部の存在を発明の構成要件としていないということにすぎず、それ以上に鑑別部が玉貸機内部に存しないことを積極要件とするものではない。
(五) 右に関する当裁判所の判断
(1) 前記本件原明細書の記載に照らすと、本件原明細書に記載された発明は、自動交換装置に関するものであって、そこに示されている自動玉貸機の鑑別機は、自動玉貸機の外にあり、複数の玉貸機に共通のものである。そして、自動玉貸機内の検定部は、投入された紙幣のデータを認識して鑑別機にそのデータを送るものであり、それ自体としては、紙幣の真贋を鑑別する鑑別機能を有するものでなかったと考えられる。
(2) 一方、本件手続補正書(本件特許明細書)の前記特許請求の範囲や発明の詳細な説明欄の記載、ことに被告も指摘する「紙幣と硬貨の正偽等を判別する検定部…」(前記(二)(3)(ア))との記載や「遊技客が…紙幣を自動玉貸機…の紙幣挿入口…より投入すると、その紙幣は自動玉貸機…において取り込みローラー…より内部に取り込まれて検定部…で検定され、本物であればそのまま取り込み通路内に取り込まれ、そうでなければ遊技客に返却される。そして本物の場合は玉貸額選択釦…を点灯させる。」(前同(ウ))との記載からすると、前記補正後の本件発明は、遊技場における薄形玉貸機に関するものであって、本件発明にいう「検定部」とは、自動玉貸機内に設けられた部材で、紙幣に関するデータすなわち紙幣の真贋判定(鑑別)のための情報を蒐集する機能のみならず、紙幣の真贋を判定(鑑別)する機能をも有するものであると解される。
(3) そうすると、右補正は、本件原明細書に記載された事項の範囲内のものではないと考えられるが、原告はこれを争うので、以下、原告の主張について検討する。
(ア) 本件原明細書及び本件原図面によれば、紙幣を縦に挿入する薄形玉貸機が、本件原明細書に実施例として示されていたことは原告主張のとおりであると認められる(本件原図面第3図参照)。
(イ) しかし、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、薄形玉貸機等の自動交換装置において、紙幣の鑑別機部分をこれと一体に設置するか別体に設置するかが任意に選択できる実施事項となっていたとは認め難い。その理由は、次のとおりである。
(a) 《証拠省略》によれば、硬貨の識別(検定、鑑別)については、原告主張のとおり、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、既に硬貨用パチンコ台間薄形玉貸機について、硬貨の検定(情報蒐集)・鑑別(真贋判定)両部を具備したコンパクトな硬貨識別装置を玉貸機の内部に設置(一体化)した例が周知であったことが認められる。
(b) しかし、紙幣の識別(検定、鑑別)については、原告が指摘する「新日本電気技報」をみても、原告が本件原明細書中でその欠点を指摘した大型の紙幣両替機(紙幣を横に挿入する従来の方式のもの)の写真が掲載されているにすぎないし、「紙幣鑑別機における紙幣ジャム処理装置」の公開特許公報―特開昭五〇―四五六九四には、右紙幣鑑別機が薄形玉貸機本体内に設置可能なコンパクトなものであることを窺わせる記載はなく、松阪立石電機株式会社・昭和五〇年九月作成の「五〇〇円、一〇〇〇円ビルチェッカ」の仕様書によれば、「ビルチェッカ」は五〇〇円紙幣及び一〇〇〇円紙幣の識別装置ではあるが、これは紙幣を横に挿入する従来の方式のものであり、パチンコ台間薄形玉貸機本体の内部に設置しうる程には小型化されたものではなかったことが認められるにすぎない。
(c) そして、《証拠省略》によれば、①本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、開発、市販されていた紙幣の検定(情報蒐集)、鑑別(直贋判定)両部を具備した紙幣識別装置は、本件手続補正書提出時(昭和六〇年一一月一八日)のそれと比べると著しく大型で性能も低劣なうえ高価であり、薄形であることが要求されるパチンコ台間自動玉貸機の本体内にこれを設置することが困難なものであり、右紙幣識別装置を本体内に設置(一体化)した紙幣硬貨両用の自動玉貸機も、紙幣を縦ではなく横にして投入する大型のものであったこと、②また、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、開発、市販されていたマイクロコンピュータを利用すれば自動玉貸機の本体内にも設置できる小型の検定・鑑別両部を具備した紙幣識別装置、すなわち、これを本体内に設置し、紙幣を縦に投入できる自動玉貸機を製造することは技術的に不可能ではなかったが、マイクロコンピュータが高価であるという価格の問題及びその周辺技術が未整備であったことから自動玉貸機には採用し難く、結局、右技術は汎用化の段階には至っていなかったこと、③それ故、当時紙幣硬貨両用のパチンコ台間薄形玉貸機の開発を目指していた原告は、本件発明出願に際し、本件原明細書においては、紙幣の検定(情報蒐集)部は自動玉貸機本体内に設置するが、紙幣の鑑別(真贋判定)部は自動玉貸機本体とは別個の鑑別機内に設置するという技術的構成をとらざるを得なかったものと認められる。
(d) 鑑別機を玉貸機と一体にするか別体にするかは、任意に選択できる実施事項であったとする原告の主張はたやすく採用できない。
(ウ) また、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、この種自動交換装置の分野において、「検定部」といえば、投入された紙幣又は硬貨に関する諸情報を蒐集するための部門をいい、「鑑別部」といえば、検定部で蒐集された情報を受けて紙幣又は硬貨の真贋等を判定するための部門であると理解するのが技術常識であったとの主張もたやすく採用できるものではない。なるほど、《証拠省略》によれば、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)、自動交換装置の分野において、紙幣又は硬貨に関する諸情報を蒐集するための部門と、右部門で蒐集された情報を受けて紙幣又は硬貨の真贋を判定するための部門とが区別されていたことは認められる。
しかし、本件にあらわれた全証拠によっても、本件発明出願当時以降、右分野において、「検定部」及び「鑑定部」等の用語が技術用語として、厳格に原告主張のような意味に定義付けられ統一して使用されており、それが技術常識になっていたとまでは認められない。また、貨幣に関する情報蒐集部門と真贋判定部門とを一体化して情報蒐集機能と真贋判定機能を併せ有する部門をどう呼ぶかについても、格別、明確な定義付けがなされていたとは認められない。
(エ) 原告は、前記拒絶査定を受けたので、本件原明細書にあった前記未熟で不完全な記載を訂正すると共に、本件原明細書に記載されていた発明の構成要件から鑑別機の要件を外し、紙幣を縦に挿入する薄形玉貸機の構成をもって特許請求をすることにしたものであるというが、これまでの認定、判断に照らすと、本件原明細書の技術水準に関する記載が原告のいうような当時の技術水準に関し誤解を招く未熟、不完全なものであったとはいえない。むしろ、これまでにみてきたところと弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発明出願当時(昭和五一年六月三〇日)以降の技術的進歩によって、本件手続補正書提出時(昭和六〇年一一月一八日)には、既にマイクロコンピュータの価格の問題が解決され、その周辺技術や整備されてこれが汎用化され、パチンコ台間薄形玉貸機の本体内に設置できる小型の検定・鑑別両部を具備した紙幣識別装置が開発されていたこと、それ故、右本件手続補正書提出時において鑑別機を玉貸機と別体としたのでは薄形玉貸機としての意義を喪失ないし著しく損うことを考慮して前記のような補正を行ったものであり、単に鑑別機の要件を発明の構成要件から外したというようなものではないのではないかと考えられる。
(オ) 更に、原告は、前記詳細な説明欄の「紙幣と硬貨の正偽等を判別する検定部」(前記(二)(3)(ア))なる記載は、検定部の最終目的である貨幣の「正偽等の判別」すなわち真贋等判定(鑑別)を以て検定部の形容句としたに止まり、前記「…硬貨を検定して本物であれば…」及び「紙幣は…検定部で検定され、本物であれば…」(前同(ウ))との記載もこれと軌を一にするものであると主張するが、右のような理解は、右各説明文を率直に読んだときの理解からは、遠く離れるものであり、右説明文の記載内容に即した自然な解釈とはいえない。
(カ) 結局、右の点に関する原告の主張は、前記本件手続補正書(本件特許明細書)の記載に即したものといえず、採用できないといわざるをえない。
(4) 以上によれば、本件補正は、本件原明細書における「検定部」に同書における「鑑別機」の機能を付加して、本件特許明細書の「検定部」としたものであり、その点において、既に本件原明細書に記載された事項の範囲内でないものに変更したものであると認めるのが相当である。他に右認定を左右する証拠はない。
2 出願日の繰下げ
そうすると、本件補正は、被告のその余の補正事項に関する主張について判断するまでもなく、特許法四〇、四一条の要旨変更に該当することになり、同法四〇条により、本件発明の出願日は、本件手続補正書の提出日である昭和六〇年一一月一八日とみなされることになる。
3 本件発明の技術的範囲
しかるところ、《証拠省略》によれば、原告は、昭和六〇年七月に、現在の原告製品である「キングサンドイッチⅢ型」を完成し、遅くとも同年九月にはこれを市場に出していたこと、右原告製品の技術的構成は、本件発明の構成要件を全て充足するものであったことが認められる。
そうすると、本件発明は、出願日とみなされる本件手続補正書提出日(同年一一月一八日)において、既に市販(公然実施)されていた右薄形玉貸機(公知技術)とその技術的構成が同一のものであることになり、明らかな無効原因(特許法二九条一項一号又は二号、一二三条一項一号)を有することになる。そして、侵害訴訟である本件訴訟においては、このような無効原因を有する本件特許権を一応有効に存在するものとして取り扱わなければならないが、右のような本件特許権の性質を考えると、その技術的範囲は、本件特許明細書(本件公報の図面)に記載された実施例と一致するものに限られると解するのが相当である。
4 被告装置との対比
そこで、本件公報に示されている実施例と別紙一物件目録で特定された被告装置を対比してみると、少なくとも左記の諸点において、両者が異なることは明らかである。
(一) 紙幣の情報蒐集及び真贋判定の両機能を具備する部材の設置場所
実施例では、紙幣の検定部91は薄形玉貸機の上部に設置されているが、被告装置の一〇〇〇円札識別機20は装置の下部に設置されている。
(二) 使用できる紙幣の種類
実施例では、五〇〇円と一〇〇〇円の両紙幣が使用できるが、被告装置では、一〇〇〇円紙幣しか使用できない。
(三) トラブル表示部の個数
実施例では、別々のトラブル表示灯10、11として二個あるが、被告装置では、一個の釣銭等表示部8をトラブル表示に兼用しているにすぎない。
(四) 玉貸(額)選択釦(ボタン)の個数
実施例には、玉貸額選択釦12が五ないし六個あるが、被告装置には、玉貸選択ボタン5が三個しかない。
(五) 釣銭表示機能を有する部材の有無
実施例には、釣銭表示部がないが、被告装置には、釣銭等表示部8がある。
(六) 釣銭切れ表示ランプの有無
実施例には、釣銭切れ表示ランプがないが、被告装置には、釣銭切れ表示ランプ9がある。
したがって、被告装置は、本件発明の技術的範囲に属さないものと認められ、他に右認定を左右する証拠はない。
四 結論
以上によれば、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上野茂 裁判官 長井浩一 森崎英二)
<以下省略>